チラシの裏の音楽室

東京に生息する29歳。音楽、地理、現代史のオタクです。

ANSWER(槇原敬之、1990年)

槇原敬之のデビューアルバムの1曲目。
小さな宝石のような輝きを放つラブ・バラード。


槇原敬之「ANSWER」 歌詞付き

日本のポップスを語る時、槇原敬之を避けて通るわけには絶対にいかない。
一つ一つの文字の母音をミックスボイスで丁寧に響かせる槇原の歌は、日本語の歌の聞かせ方としてある種の理想だからだ。
また、良いか悪いかは別にして、槇原の詞はいつも、きわめて私的な感情と情景を描いている。例外として「世界に一つだけの花」みたいなメッセージソングもあるけど、社会的・政治的な立ち位置を感じさせる詞などは一切ない。このことはJ-POPという世界の全体的な傾向でもある。

"愛という 窮屈を がむしゃらに 抱きしめた"
このたった一節が「ANSWER」では実質的なサビの役割を果たしている。
冒頭の「愛」で曲中の最高音に達し、「がむしゃらに」では、一気に歌いだしの音程まで戻ってくる。それでいて音の濃密な動きが詞の力を殺していないどころか、全く無理なく、はっきりと浮き立たたせている。
この曲は高校生の時代に書いたのだという。たぶんこの歌を作った時から『UNDERWEAR』あたりまでの約10年が彼の創作のピークだったと思う。
槇原ほどに恋愛の情景を、誰にでも伝わるようにメロディに乗せて描けるシンガーソングライターは、その後登場していない。